「うちの子、読み書きが苦手かも…」と思ったとき、なぜ相談できる専門家が見つからないのか

LD

子どもが教科書をたどたどしく読む。


「あ」と「お」を書き間違える。


漢字を何度練習しても覚えられない。

「もしかして、読み書き障害(ディスレクシア)かも?」

そう思って病院や相談機関を検索した瞬間、多くの親御さんがぶつかる壁があります。

「診てくれる専門家が、どこにもいない。」

発達障害の相談窓口に電話しても「うちでは専門的な評価はできません」と言われる。


言語聴覚士(ST)さんに相談しても「学習障害は専門外なんです」と断られる。


やっと見つけた専門医の予約は、半年先。

「私の探し方が悪いのかな」

「田舎だから仕方ないのかな」

そう自分を責めてしまう方も多いのですが、断言します。

あなたの探し方が悪いのではありません。

日本には、読み書き障害を専門的に診られる人材そのものが、構造的に足りていないのです。

今日は、なぜこんな状況になっているのか、そしてその中で私たちができることは何かを、一緒に整理していきたいと思います。


① そもそも「読み書き障害を専門にする資格」が日本にはない

海外、特にアメリカやイギリスでは「ディスレクシア専門家(Dyslexia Specialist)」という資格や認定制度が存在し、学校の中に専属の支援員がいることも珍しくありません。

一方、日本には読み書き障害だけに特化した国家資格や専門職が存在しません。

医師、言語聴覚士、特別支援教育士、公認心理師など、それぞれの資格の中で「たまたま学習障害にも詳しい人がいる」という状態なのです。

つまり、専門知識は「個人の努力と関心」に依存していて、制度としてのルートが整備されていない。

これが一番大きな根っこの問題です。

② 言語聴覚士さんが「専門外」と言う本当の理由

「言語聴覚士なら言葉のプロだから読み書きも診てくれるはず」と思いますよね。私も最初はそう思っていました。

でも実は、言語聴覚士(ST)の養成カリキュラムの中心は「発声・嚥下・失語症など、主に医療現場での言語機能のリハビリ」です。

学齢期の子どもの読み書き(学習障害)を専門的に学ぶ時間は、カリキュラム全体からするとごくわずか。

例えるなら、STさんは「言葉を話す・飲み込む」ためのスペシャリストであって、「文字を読む・書く」ための専門トレーニングを受けているとは限らない、という感じです。

同じ「ことば」を扱っていても、専門領域がズレているんですね。

だからこそ、誠実なSTさんほど「私では十分な評価ができません」と正直に言ってくれる。それは冷たいのではなく、専門性への誠実さの表れでもあります。

③ 医療・教育・福祉のあいだに「隙間」がある

読み書き障害の支援は、本来なら医療(診断)・教育(学校での支援)・福祉(療育)が連携して行うべきものです。

でも実際には、この3つの領域がそれぞれ別の法律・別の予算・別の資格制度で動いています。

  • 病院は「診断」はできても「学校での学習支援」まで手が回らない
  • 学校は「配慮」はできても「専門的な評価」はできない
  • 療育機関は未就学児が中心で、小学生以降は対象外になることも

この「隙間」に、読み書きに困っている子どもたちがすっぽり落ちてしまっている。

これが多くの親御さんが感じる「たらい回し感」の正体です。

④ 「診断名がつかない」ことが支援を遠ざける

読み書き障害は、知的発達に遅れがないケースが多く、パッと見ただけでは分かりにくい障害です。


会話は普通にできる。運動もできる。だからこそ「怠けている」「努力不足」と誤解されやすく、正式な診断(医学的評価)を受けるまでのハードルがとても高い。

診断がつかなければ、公的な支援制度にもつながりにくい。

支援につながらなければ、専門家に会う機会も増えない。

専門家に会う機会が少なければ、その分野で経験を積む人材も育ちにくい——という悪循環が起きています。


⑤ でも、希望がないわけじゃない

ここまで読むと「じゃあ、うちの子はどうすればいいの」と不安になりますよね。

実は近年、この状況を変えようとする動きも確実に広がっています。

  • 大学や研究機関発の、読み書きスクリーニング検査の普及
  • 通級指導教室(通級)でのICT活用の広がり
  • 保護者・当事者団体による情報発信の増加
  • タブレットや読み上げアプリ、AIの活用など、「診断を待たずにできる支援」の選択肢の増加

制度が整うのを待つだけでなく、今この瞬間からできる工夫は、実はたくさんあります。

専門家探しと並行して、家庭でできる支援を始めることは十分可能です。



まとめ:探し方を変えれば、道は見えてくる

日本で読み書き障害の専門家が少ないのは、あなたのせいでも、地域のせいでもなく、制度の隙間という構造的な問題です。

まずはそのことを知るだけで、ずいぶん心が軽くなるのではないでしょうか。

とはいえ、立ち止まっているわけにはいきませんよね。次の一歩として、こんな行動から始めてみてください。

  • 「発達障害者支援センター」に、まず一度電話してみる(診断の有無に関わらず相談可能です)
  • 学校の「通級指導教室」や特別支援コーディネーターに相談してみる
  • 診断を待つ間も、読み上げアプリやICT教材で「できる」体験を積ませてあげる

専門家が少ない現実は、すぐには変わらないかもしれません。

でも、あなたが情報を持って動けば、子どもに届く支援の量は確実に変わります。


大丈夫。一人で抱え込まなくていいんです。今日知ったことを、次の一歩に変えていきましょう。

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